『洞爺湖町土壌性質マニュアル』の公開について
平成17年発刊の『洞爺村高台地区土づくりマニュアル』を基とし、町内に存する農地全体の土壌性質を把握し、クリーン農業の土台となり得る情報提供のため、関係機関・団体と協働で『洞爺湖町土壌性質マニュアル』を取り纏めましたので公開いたします。
洞爺湖町における【土壌性質マニュアル】について
【洞爺湖町の概要】
洞爺湖町は、北海道南部に位置しており、平成18年3月27日に旧虻田町と旧洞爺村が合併して誕生しました。
洞爺湖と有珠山、噴火湾に囲まれ、羊蹄山も遠くに眺めることが出来る自然ゆたかなまちです。
北海道内でも比較的温暖な気候で漁業や農業、畜産などが盛んに行われています。
交通の便もよく、札幌から車で約2時間、新千歳空港からは車で約1時間30分。
国内外から観光客が集まる北海道有数の観光地です。
【洞爺湖町農業の現状と課題】
洞爺湖町農業は主に3つの地域に分けられ、露地野菜や畑作を経営の柱にしている高台地区(大原・富丘、香川、成香・伏見、花和)と、施設野菜や水稲を主に栽培している下台地区(財田・川東、洞爺)、野菜を生産し直売などを行っている旧虻田地区(月浦・虻田)であり、生産額では高台地区が農業算出額7割を超えている。
高台地区での土地利用型農業では馬鈴薯、ながいも、人参、ごぼう、大根など根菜類を中心とした高収益作物を栽培しており、甜菜、小豆、スイートコーンなどの作物に加え、近年は小麦の作付けが急増するなど、輪作体系が確立されています。
また、環境にやさしいクリーン農業にも取り組み、JAとうや湖では全国に先駆け平成21年にGLOBAL・G.A.Pを取得しました。
下台地区ではトマト、ミニトマト、セルリーなどの施設野菜のほか、財田・川東地区において生産される「財田米」の販売促進活動を重点的に行い、肉牛経営農家との耕畜連携も図るなど、持続的な農業経営の発展を目指しています。
月浦・虻田地区においては農家戸数が減少していますが、道の駅などでの直売により活路を見出しています。
本地区の全体的な将来への課題としては、高齢化等による労働力の確保対策が急務であり、今後、雇用就農の、農業パート等の人手の確保対策と併せて、自動化・省力化によるスマート農業を関係機関一体で推進していく体制の確立が必要となります。
また、洞爺湖町は都市近郊であること、気候が比較的温暖なことで、野菜(根菜類、果菜、葉菜類等)、畑作物、水稲、酪農、畜産など多品種多品目生産を行っていますが、2020年センサスの高齢化率は44%となっており、農家戸数も減少しています。
販売農家戸数は平成25年の187戸から令和5年には142戸へと減少し、10年間で24%の減少となっており、今後もこの傾向が継続することが危惧されています。
平均耕作面積は13.9haから22.8haと拡大し、担い手への農地集積率は90.2%となっています。そのうち高台地区の平均耕作面積は30.5ha、下台地区は7.8haとなっています。
農業研修センターを運営する町とJA、普及センターなどの関係機関と農業者のみなさんが共通認識をもって農業の持続的な発展を遂げる為に【土壌性質マニュアル】を取り纏めました。
【土壌性質マニュアル】の作成について
1 背景、目的について
従前、洞爺村では土壌の定点調査(地力保全基礎調査)を行っていましたが、平成18年度の虻田町との合併以降、土壌の性質を把握するような事業は行われていませんでした。
そこで、今回洞爺湖町全体の土壌性質を把握、また土壌分析結果に基づき施肥設計を行う農業者や関係機関で活用するべく、【洞爺湖町土壌性質マニュアル】を作成することにしました。
2 作成に係る方向性について
土壌分析を行うポイントの選定は平成17年発刊の『洞爺湖町高台地区土づくりマニュアル』と昭和35年の文献から選定しました。(土づくりマニュアルは昭和35年の文献を基にポイント選定している)
しかし、この2つの文献の土壌採取ポイントは高台地区(旧洞爺村地区)のポイントのみの為、下台地区、花和地区、月浦、虻田はランダムにポイントを選定しました。
土壌の採取方法は1つのポイントから作土層と心土層の2サンプルを採取する方法を採用し、通常の土壌分析では圃場内の5点採取が基本となりますが、今回の調査では圃場の土壌性質を求めるのではなく、洞爺湖町全体の土壌の性質を知ることに重きを置いたため、面で捉えることを目的として1圃場に付き1点の定点調査を行いました。
また、今回採取したポイントは緯度と経度を記録し、将来、噴火による火山灰の降灰等で土壌性質の大きな変化が起こってしまった際に、全く同じポイントで土壌採取することで、前データと比較し、対応を協議する根拠とすることとしました。
また、分析項目は変化の度合いが小さい項目(腐植、CEC等)を中心に、データ化し、その他一般分析項目も分析し、地域別の土壌の性質を可視化できることを目的としました。
作成に当たっては胆振農業改良普及センター、JAとうや湖等の関係機関の協力により進め、最初に作成に係る方向性を決定しました。
- 【洞爺湖町土壌性質マニュアル】作成に係る方向性 (PDF形式:119KB)
3 土壌マップの作成について
作成方針に基づき関係機関と共に土壌の採取を実施し、その後、洞爺湖町農業研修センターにおいて分析業務を行いました。
地域内を細分化し、土壌分析結果をグラフ化することで、エリアごとに土壌性質の特徴を可視化し、胆振農業改良普及センターの協力を得てコメントを記しました。
- 【洞爺湖町土壌性質マニュアル】土壌マップ (PDF形式:5MB)
4 土壌分析結果の見方と改善対策について
【洞爺湖町農業研修センターでの土壌分析業務について】
農業研修センター『とれた』では、洞爺湖町の農業振興や農業技術の向上を目的とする土壌分析業務を実施しており、土壌分析の依頼は町内に限らず、近隣市町の町外の方からも依頼を受け、実施しています。
近年の肥料価格高騰の影響により適正施肥の検討材料となる土壌分析を求める農業者が増えてきており、その重要性が見直されています。
今回、【土壌分析結果の見方と改善対策】を関係機関とともに作成しましたので、是非土壌分析を農業研修センターに依頼し、この資料を参考にしながら自経営の土壌改善に役立てていただきますようお願いします。
- 【土壌分析結果の見方と改善対策】 (PDF形式:1MB)
5 施肥設計と土壌図について
土壌分析を実施しても、その分析結果を有効に活用するためには施肥設計を行うことが必要となります。
施肥設計とは肥料を農業生産上、合理的かつ有効に利用するように立てられる施肥の計画のことで、栽培作物の種類、土壌分類、目標収量を鑑み、どのような肥料をどの時期にどれくらいの量を与えるかを決めることです。
適正な施肥設計を行うためには土壌分析を実施し、作物ごとの必要な養分量からすでに
畑に存在する養分量を引き算します。
(地独)北海道総合研究機構農業研究本部では、【北海道施肥ガイドWeb】を公開しており、北海道が刊行する[北海道施肥ガイド2020]に基づき、道内の各農作物に対する化学肥料の適切な施肥成分量を設計できます。
【北海道施肥ガイドWeb http://sehiguide.jp】
また、施肥設計の重要な要素として土壌分類がありますが、土壌の種類ごとの分布状況を地図化した【土壌図】もインターネット上で公開されています。
農業・食品産業技術総合研究機構の【日本インベントリー】のサイトでは、土壌の種類ごとの分布状況が示されている土壌図、土壌の種類ごとの説明、土壌温度(平年値)図の分布図を閲覧することができます。
【農研機構 e-土壌図 2 http://soil-inventory.rad.naro.go.jp】
【公開にあたって】
近年、異常気象や物価高騰の影響により安定的な農業経営の継続が危ぶまれており、農業を継続的な産業として位置づけるならば、その原点は土づくりにあります。
消費者から求められている「安全・安心」な農畜産物を安定的に供給するため、地域が共通認識をもって洞爺湖町農業の発展へ向かうために、このサイトが有効に活用されることを関係機関一同、期待しております。